5月28日、「音楽による癒しのセッション -シュタイナーの音楽療法の実践-」というセミナーを受講してきました。
シュタイナーというのは、19世紀~20世紀初頭にかけて活躍した哲学者。
精神科学(人智学)という独特な世界観や人間観を確立した方です。
そして、私の弾いている楽器、ライアーは彼の考え方を元に創り出された楽器です。
28日は、そのシュタイナーの考え方に基づいた音楽療法に関するセミナーでした。
まず始めは、シュタイナーの世界観や人間観、教育・療法の基礎としての音楽観に対する講義。
私たちの周りには、目に見えるもの(肉体・物質)から目には見えないもの(精神世界・心の世界)まで、様々な存在があって成り立っている。
また、例えば、呼吸や脈拍とリズムの関係、感情とハーモニー(調和)の関係など、私たちの体の構成要素と音楽は密接に関わっている、というような内容でした。
その後は、ドイツで現在活躍されている日本人音楽療法士、東福先生による講義。
東福先生がなぜシュタイナーの音楽療法に携わるようになったのか、という経緯など聞きながら、シュタイナーの音楽療法とはどういうものなのか、という事を聞く事ができました。
音楽療法とは、療法士の演奏などが患者さんを治療する、という考え方なのではなく、
「療法士の中にいる神」と「患者さんの中にいる神」とが音楽を通じて対話をし、患者さんの治癒力を高める、のだそうです。
お昼休憩をはさんだ後、日本の医学・音楽療法界ではとても有名な、日野原重明先生による「音楽の癒しの力」という講義。
音楽の人に与える良い影響や、病院の環境や周りにある音楽・絵画と心の動きの関係、プラトンの時代から音楽は人格形成に大きな影響を与える、と言われていた事などをお話された上で
「今の日本では、EBMと呼ばれる科学的根拠が無ければ医療として受け入れにくい。シュタイナー的音楽療法は、目には見えにくい成果を挙げているが、今後、音楽療法が受けられていく為には、さらに研究・実績を挙げる必要性がある。」との事でした。
最後は、午前中も講義をされた東福先生による実践。
音の感じ方を受講者で話し合いながら昇天助奏、という演奏方法を披露して頂きました。
使う音の数によって、人の感じ方は異なるそうです。
4つの音ではより自然に近く感じ、5、6音と増えるに従って現実に近く感じられるのだとか。
呼吸が速く、息苦しそうな患者さんであれば、まず5、6音を使いながら速いテンポで演奏をし
患者さんの様子を見ながら少しずつ音を減らしてゆくと、患者さんの呼吸は少しずつ落ち着いて穏やかになるのだそうです。
昇天助奏とは音の数と流れをその場に応じてアレンジするのだそうで、その日に先生が演奏された昇天助奏を聴いていると、楽しい感じの音色から、だんだんと穏やかに、心地良くなってゆく変化を感じました。
その後はうつ病であった患者さんがどのように回復されていったのか、を実際の患者さんと共に行った
ライアー演奏を実践して頂きながら、2人の事例を紹介して頂きました。
シュタイナーによると、人間の臓器と音とは結びつきがあるので、どこか悪い臓器がある人はそこに関係する音を中心に治療をするそうです。
さらに、その音に対して「5度の位置」にある音を合わせて(例えばシとミなど)、その音を繰り返し演奏すると、
5度の関係は人間を優しく覆う音程なので、落ち着きを感じられるそうです。
けれど、音楽療法、というものは、お医者様との協力があって初めて成立するものなので、お医者様によほどの理解がなければ、受け入られにくいとの事。また、例え同じ病気であっても、患者さん1人ひとりによって好む音楽は違うので、療法士は1人ひとりとじっくり向き合って治療をしてゆかないと逆効果を生んでしまうこともある、とも。
今回東福先生が来日された理由の1つは、日本の医学界に対して、音楽療法の啓蒙活動をする為なのだそうです。
私は音楽家でもなければ、医学界の事など全然知らないのですが、現在の日本では、そこまで音楽療法は盛んではないようです。確かに、「音楽療法によってこんなに良くなった!」という結果を出すことは難しいでしょうし、病院にそこまでの余裕があるとも思えません。また、ヨーロッパほど日本では音楽が身近ではない為に、患者さんやその家族にも音楽療法が受け入れられにくいかもしれません。
しかし今回のセミナーを受講して、特に精神的な病気である人にとっては、音楽療法によって症状が軽くなるケースは結構あるのではないだろうか、と思いました。
一時期、音楽療法士になってみたい、なんて気持ちを持っていた私。
その後、少しずつ状況を知るにつれ、到底私などでは音楽療法士にはなれない事を知りました。
けれど、様々なストレスが多い中で生きる現代人に、ライアーの音色を聴いてもらう、という事であればできるかもしれない。
日本では、8年連続で自殺者が3万人を超えた、というニュースを聞きました。
その数は私が生まれ住んでいる町の人口とほぼ同じ。
自分の周りに住んでいる人が心の病気が元でいなくなってしまったら、、、そう考えると悲しくてなりません。
「音楽療法」とまではいかなくても、少しでも気持ちが穏やかに、心地良い時間を過ごせるような、そんなライアーの演奏をしたいな、と思っています。
なんて、まだまだ全然そんな域には達していなくて今はまだ弾いている本人が心地良いだけなので……
練習を頑張りたいと思います。